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外国人の子どもが安心して学習できるまちづくり
~不就学ゼロをめざして~
小島祥美
(岐阜県可児市教育委員会学校教育課・外国人児童生徒コーディネーター)

  日本に暮らす外国人住民の数は、年々増加しています。しかしながら、未だに外国人の子どもの教育の権利は、保障されていません。ですので、外国人の子どもの就学実態を把握している自治体がありませんでした。また、外国人の子どもの就学の課題を考える際に、最も基本的な資料となるはずの信頼できる調査や研究もありませんでした。
 2005年11月1日現在、可児市における外国人登録者数は6,232人で、総人口の6.2%に相当します。国籍別にみますと、「ブラジル」が4,567人で最も多く、次いで「フィリピン」が987人、「ペルー」は36人です。可児市で暮らす住民の約16人に1人が外国人住民という、いわゆる「外国人集住地域」です。

 このような現状から、可児市では外国人の子どもが安心して学習できるまちづくりを目指して、外国人の子どもの就学実態調査を2003年4月~2005年3月の2年間、実施しました。これは、全国初の取り組みでした。調査実施にあたっては、大阪大学大学院の研究班をはじめ、可児市、可児市教育委員会、岐阜県、岐阜県教育委員会、(財)岐阜県国際交流センターの他、ボランティア団体である可児市国際交流協会と協働・協力しました。
 この調査では、調査対象者を可児市に外国人登録をしているすべての国籍の子どもとしました。そして、調査員が対象者の家庭を訪問し、子どもの就学状況を把握しました。調査中は、個人のプライバシーの保護には、万全の注意を払いました。6歳から14歳(日本の学校の小1~中3に相当)のすべての国籍の子どもを対象に、計3回の同じ調査を実施することで、外国人の子どもの就学実態が詳細にわかりました。
 外国人の子どもの就学は、可児市立小・中学校のみならず、養護学校、私立学校の他、インターナショナルスクールや朝鮮学校、ブラジル人学校と、多様であることがわかりました。また、学校に行っていない子どもは、可児市に多く暮らす「ブラジル」国籍者だけでなく、フィリピン、韓国・朝鮮、インドの子どももいました。つまり、日本国籍を保有していない子どもは、国籍に限らず、就学が保障されていないという実態がわかりました。
 また、学校に行っていない子どもの要因について詳細に分析すると、日本の学校に通っていたが学習意欲を失ってしまった子どもが多いことがわかりました。
 このような「調査結果」という明確な根拠から、外国人の子どもの教育について、見直しと改善の動きが高まりました。そして、山田豊可児市長が「外国籍の子ども達の不就学ゼロ」を述べたことより、2005年4月から「不就学ゼロ」を目指した取り組みが開始することになったのです。

 可児市の学校では、日本語がわからない子どもに対し、日本語のレベルに合わせて学習を進める外国人児童・生徒の学習サポート体制が確立しました。その他、外国人家庭への支援としての学校配布資料の多言語化、外国人児童・生徒に関わる学校関係者による担当者会議の開催、外国人児童・生徒たちが安心して就学が継続できるための教育環境をコーディネートする人材の雇用、ブラジル人生徒が多く在籍する中学校におけるポルトガル語授業の開講、外国人児童・生徒を取り巻く現状理解を目的にした職員研修会等、様々な試みが開始しました。
 可児市に新たに転入した子どもから学校に行っていない子どもも多いことがわかったことより、外国人登録の手続きの窓口では、就学案内が行われるようになりました。また、市役所内では、多言語で対応できる外国人相談窓口が終日対応できる体制になりました。
 また、ボランティア団体である可児市国際交流協会と教育委員会が連携し、地域に暮らす外国人の子どもを支える取り組みも開始しました。多言語による進路・進学ガイドブックの作成、多言語対応の進路・進学相談会の開催に取り組んでいます。
 可児市国際交流協会では、外国人生徒のための奨学金制度基金を設立し、高校進学予定の市内在住の外国人生徒を対象にした奨学金制度も開始しました。その他、外国人児童生徒に関わる教員を対象に、学校現場で役立つポルトガル語講座の開講、外国人児童・生徒の補習教室、子どものためのポルトガル語教室等、地域の子どもを支える活動を行っています。

 外国人の子どもの就学に関する課題解決のために、行政だけでなく、研究者やボランティア団体と協働して調査を実施しました。その結果、課題解決に向けた具体的な取り組みが、協働したネットワークが「連携」という形となって機能し、様々な取り組みが開始しました。
 今後もこの連携プレーを生かし、外国人の子どもが安心して学習できるまちづくりを目指して、様々な取り組みを実践していきたいです。

 

■可児市教育委員会公式ホームページ
http://www.city.kani.gifu.jp/gakushuu/gakkyou/gaikokuseki/top.htm

こじま・よしみ/1973年生まれ。大阪大学大学院博士後期課程修了。034月より、厚生労働省子ども家庭総合研究事業「多民族文化社会における母子の健康に関する研究」班の研究一環として、可児市へ転居し、現地研究責任者として調査活動に従事(~053月)。20054月より、現職。


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