l
p1

giro postal

 
 

 

日本式の手続き その2
-通用しない「あとだし」と「ダメもと」-
小林正典(広島ペルー協会専務理事)

<> 期待できないトップ会談
 日本の役所でのトップ会談に、有効性はあまりない。ペルー人は、トップに会うと急に依頼事項を言い出すことがある。日本ではトップが「いいです」と言っても、何の約束にもならない。せいぜい『話の内容は分かりました。今後、あなたが役所の担当者にきちんとした計画を提出したら、検討に入りましょう』という意味でしかない。
 日本の役所では、役人がつくった計画をトップが承認する方法で物事が進むのだ。

<> 日本式は担当者と
 ペルーでは「大統領が代わると大統領府の駐車場の番人まで代わる」と言われるそうだが、日本の役所では、定年まで身分が保証されたお役人が、トップが誰に変わろうと、いつもどおりに仕事を進めていく。数年で交代するかもしれない市長とか県知事などの力は弱い。
 だから担当部署に問い合わせて、そこに書類の1枚でも先に出すのが、役所に対する日本式のやり方だ。この担当部署と担当者を掴んでないと、案件は先に進まない。とくに2部門にまたがるような案件は、最初にはっきりさせることが重要だ。

<> 日本の役所は時間がかかる
 日本の役所では何でも決まるまで大変時間がかかる。だから常識として、時間がどれくらいかかるかを逆算して準備を始めなければならない。
 担当者が計画書をつくり、内部で関係する人の了解を取っていき、全員の了解が揃ってやっと決まる。そのために時間がかかるのだ。また、ものによっては、議会の承認がいるから、半年から1年前に計画が出ていないと間に合わない。

<> 通用しない『あとだし』
 もう一つ、何かが決まったあとに、ペルー人などが「ついでにこれも」と追加の要求を出すことがある。する事が決まったら、次は規模と内容を、と順に考えるらしいが、この『あとだし』は、日本の役所では最も嫌われる。
 日本の役所は、信じられないほど初めから詳しい計画をつくる。事業主旨、内容、規模、予定日、会場、関係者、費用、負担者などが、計画書に全部書いてある。それが認められたら、もうその時点では変更できないのが普通だ。「なぜ最初から言わなかった」と怒られるだけだ。

<> 役所とうまくつきあう
 縦割りの組織で融通がきかず、時間がかかり、不便なことの多い日本の役所だが、ワイロと縁がなく、決まったことはトップがどう変わろうと必ずやってくれる頼りになる面もある。日本人の私としては、日本式をうまく使ってもらいたいと思う。

日本式の楽しみ方と予定の立て方
 こんな体験はないだろうか。
 『公民館まつりとか学校のバザーとか、日本人もペルー人も一緒に楽しむ会があった。初めは静かな感じだったが、途中からペルー人同士、大いに盛りあがった。しかし気がついてみると、会場に残っている日本人は少数。あとで日本人に聞くと「楽しかった」とは言うが、浮かない顔。「またやろう」という人もいない』。
 この理由を考えたことがあるだろうか。
<> 予定外の時間
 予定の時間にみな集まり、予定の時間に始まり、食事も予定通りに始まり、予定の時間に終わっただろうか。
<> 予定外の人
 誰でも参加できる野外のまつりなどは構わないのだが、そうではない集まりへ突然、予定外の友達が加わった、ということはなかっただろうか。
<> 予定外の品
 バザーで民芸品を売る予定が、ついでにインカコーラとセルベッサも売った。セビーチェの予定を、当日になってアンティクーチョに切り換えた、などということはなかっただろうか。

予定が大事な日本人
 1、2、3のいずれにも「予定外」が共通する。そして、ペルー人と違い、日本人は「予定外」が嫌いなのだ。多くの日本人は、予定通りに進まない会合にイライラし、予定外の人が入ってきたら不愉快になり、予想した品やメニューがないと機嫌が悪くなる。
 3の場合は、さらに別な問題を含んでいる。食物を扱うときは保健所、火を使うときは消防署、公園は役所、路上で行うときは役所と警察署の両方に、事前に届けて許可をもらう必要がある。届けていれば問題がないことでも、許可無しでやれば叱責されるし、次の時になかなか許可がおりない。日本とはこのような社会なのだ。

予定外をつくらない
 電車が1、2分遅れただけで怒る日本人は多いので、「日本人は気が短い」と評する人もいるが、少し違う。
 例えば台風で飛行機が飛ばないとか、地震で列車が止まったとか、天災に遭遇した場合。ほとんどの日本人はあきらめて静かに待つ。しかし「予定通りにできたはずなのに予定通りにならない、人為的なアクシデント」には苛立ち、原因をつくった組織や人を憎む。
 そんな日本人を、ばかばかしい性癖の人達と笑うのは勝手だが、あなたがその原因をつくることは避けたほうが、住み心地が良くなるに違いない。
 もうすでに失敗に心当たりがあったら、次の機会に気をつければよいと思う。日本は、和が大切な国で、「済んだことは水に流す」のだから。

 

こばやし・まさのり/

 

 

   


Todos los derechos reservados. Kyodai 2006 ©. Pagina creada por GeoDigitalWeb. Tokyo - Japón